「未来はすでに僕を侵食し始めている。」
多様なスケールで転回を続ける言葉と思考の記録。
独立研究者・森田真生さんによる渾身のドキュメント・エッセイ。
目次
はじめに
春/STILL
夏/Unheimlich
秋/Pleasure
冬/Alive
再び、春/Play
おわりに
二〇二〇年。パンデミックによって変わりゆく世界を前に、ひとり書き綴る日記からこの本ははじまる。数々の講演のため、これまで全国各地を行脚していた著者は「家」に留まることになり、図らずもそこから思考は展開していく。子どもたちの素朴な疑問、無垢な感性。庭の植物や畑と蔓延る生命。歩みを止め(STILL)、足元の多様な生物たちに触れ、雑(まざ)り合う生活のなかで、異種との交感を存分に味わい、遊び、感動しながら、瑞々しい文体で紡がれる四季のエッセイ。
そして、日常から世界へ。ウイルス、気候変動、生態系。人類の自己破壊的な営みによって、「これまで」が通用しなくなった世界を前に、僕たちはどう生きるか。エコロジカルな転回(ecological turn)とは何か。ティモシー・モートン、エマヌエーレ・コッチャ、ステファノ・マンクーゾらの論を取り入れ、リチャード・パワーズ、宮沢賢治の文学に導かれる。そして、協生農法を提唱する研究者・舩橋真俊、歴史学者・藤原辰史、植物観察家・鈴木純、土の研究者・藤井一至ら国内の同志と出会い、対話を重ね、さらに磨かれていく思考は、突き抜けるように清々しい。日記とともにその時点の思考を書き綴った文章で、森田さんが歩む速度や息遣いを感じることができます。
2024年夏、装い新たに文庫本として生まれ変わりました。