奈良の天然酵母パンの店、MIA'S BREAD(ミアズブレッド)。店主の森田三和さんによるエッセイと日記が一冊の本になりました。side Aにエッセイを、side Bにはホームページに日々書き続けている日記を収録。じっくり読みたいとき、気軽にページを捲りたいとき、そのときの気分に合わせてさまざまな楽しみ方ができる両面開きの仕様は、本を開くという行為の純粋な高揚感をあらためて思い出させてくれます。
仕事のこと、日々の生活、切っても切り離せない食べもののこと、めぐる季節、ふるさとの記憶…。店でパンを焼き、サンドイッチを作りながら、目の前で起きていることのほんの少し奥に潜むものを、まっすぐな飾らない筆致で掬い上げる森田さん。ぶれない軸を持ったのびやかでエネルギッシュな文章からは人柄が窺い知れるよう。折々に添えられた手描きのイラストがチャーミングな一面をも覗かせています。
きっと読みすすめるうちテーブルを挟んで向かい合い、話を聞いているかのような親しみを覚えてしまうはず。本書のお供にはぜひおいしいサンドイッチとコーヒーを。読めばじんわり元気が湧き上がってくる、そんな一冊です。(岡本)