あるテーマをめぐり、さまざまな分野の著述家や芸術家の表現を集め、それらを1つの封筒にパッケージしてお届けする『アンパサンド』。ジャンルに偏ることなく、作品たちが「&:アンパサンド」されることで、新たな発見がうまれるようにとの願いから名付けられた小雑誌です。
第一集のテーマは「詩的なるものへ」。こちらは、封筒入り組立式・全6号でお届けするその小雑誌の第二号。今回も、私たちを「詩的なるもの」という秘密の感覚の世界へ誘ってくれる6人の作家の作品たちが誕生。
「詩」から「詩的」へ――「詩」とは何かという土壌からは離れて、「詩的なるもの」に愛でられた作家たちの創作品。手に取り触れ読む人々の詩的体験をうながす、回文、手紙小説、創作ノート(ドローイング)、エッセイ、レイヤースコープ(多重する写真と文)、ポエトリ・エフェメラ(オブジェ・写真・文)を「&:アンパサンド」してお届けします。今回から、「びん博士」こと庄司太一の「ボトロジア通信」を初回配本500部限定特典として付録。「びん的世界」に潜む詩的なることを体験することのできるその文章も大いにお楽しみください。
【作品紹介】
◆創作ノート ー はなびらとかたみ{as a butterfly, as a fragment} / 大森裕美子
出会った形をモチーフにして展開していくドローイング作品のシリーズ「はなびらとかたみ{as a butterfly, as a fragment}」をテーマにした習作ノート。今回はデジタルワークによる作品に言葉を添えて冊子にて仕上げていただきました。
◆手紙小説 ― 遠い場所からの手紙 2 鞄からの手紙 / BOOKSOUNDS
遠いとおもいがちな場所から近くするべくこのお手紙をお届けします――今回は、鞄からあなたに手紙が届きました。不思議な手紙小説の世界へ、どうぞ。
◆レイヤースコープ(多重する写真・文)― TORUS 2 / 村松 桂
第2号では写真と文が印刷された透明のレイヤーを2枚お届けします。1枚は街の景観のように言葉をのせて、もう1枚はワルツを踊る女性と言葉が綴られたもの。第1号でお届けしたシートにいずれか1枚を重ね合わせていただきます。
◆回文―わたしたち、言葉になって帰ってくる ー抄― 2 魚 / 福田尚代
はじまりからもおわりからも読むことのできる回文。今回のタイトルは「魚」。コトバを「粒」として、詩的に感知している福田さんにこそ創作できる作品は、まさに「言葉の芸術」といえるでしょう。
◆ポエトリ・エフェメラ(写真・文)― INNOCENT 2 廃船 / 川添洋司
前回の「天使」から打って変わって、今回のタイトルは「廃船」。一隻の廃船に「廃船は美しい」にはじまる言葉が添えられています。川添さんの目に映る「詩的なるもの」を、活版印刷の深みある文字と二つ折りのカードでお届けします。
◆エッセイ ー 詩的なるものー二十世紀美術家たちの言葉 / 間奈美子
20世紀アーティストが書き残した「詩的なるもの」をめぐる言葉を集めて綴るエッセイ。「詩とは何か」と問われてきた近現代抒情詩の土壌とは別の場所で、「詩的」とはどういった事象かをじっくりと考察します。
◆500部限定付録 チャップブックーボトロジア通信 第一号 / 庄司太一(通称:びん博士)
45年以上をかけて、主に手造りのガラスびんを収集し、その数6万本以上。収集したガラスびんのコレクションは自宅近くの「ボトルシアター」という建物に収納され、一般の方々への開放も行なっています。今回は、ガラスびんとの出会いからこれまでのこと、びんの詩的世界観を綴ったエッセイを小さなチャップブックにしてお届けします。
【著者紹介】
[川添 洋司 Yoji Kawazoe]
20歳で木彫に出会い、リアリズム彫刻を始める。以来、海に流れ着いた生活残滓がある流木を素材にした立体造形や、風化をテーマにした人物彫刻など幅広い作品を展開し、全国各地での個展を開催。舞踏、演劇、音楽の舞台美術にも長年携わる。
[大森 裕美子 Yumiko Ohmori]
1987年、小さな実と錆びたワッシャーを拾い、硝子板のうえに配置したことが、代表作「material glance」のはじまり。 それ以来、出会い保管してきたさまざまな物質や言葉を配置することをまなざしの訓練として続けている。 オブジェクト、インスタレーション、造形、ドローイングなどの手法で、多くのシリーズ作品を展開。
[福田 尚代 Naoyo Fukuda]
美術家。主な展覧会に「MOT アニュアル 2014 フラグメント」(東京都現代美術館、2014 年)など。著書に『ひかり埃のきみ 美術と回文』(平凡社、2016 年)など。
[BOOKSOUNDS]
「何者からかの手紙」の配達人として、あなたへの手紙をそっとお届けしています。
第1集では「遠い場所からの手紙」をお届けします。
[村松 桂 Katsura Muramatsu]
作家。写真、コラージュ、テキストを主な手法とし、静謐な物語性を秘めた作品を発表。主な個展に「FLUCTUS」(2017年・GALERIE KISOU)、「Naturanaturans」(2019年・つやま自然のふしぎ館)など。
[間 奈美子 Namiko Hazama]
言語美術。1994年、未生響名義で自身の詩的テクスト+造本作品を刊行するインディペンデント・プレス「空中線書局」を開設。1999年には文学・芸術の作品集の編集から制作を請負う「アトリエ空中線」を設立。
[庄司 太一 Taichi Shoji]
通称:びん博士。大学在学中から日本ではほとんど関心を持たれていなかったガラスビンの収集とその歴史的背景に興味を抱く。ワシントン州立大学に留学の機会を得て、アメリカのボトル文化に触れ、帰国後、びん収集を本格的に行う。日本初のガラスびん博物館「ボトルシアター」を開設。またミュージシャンとしても活動を開始。