ちょっととぼけたタイトルのこの雑誌、『ぽかん』待望の第一号刊行です。有名無名をいっさい問わず、ただひたすら編集者の視点で、気に入った書き手たちから文章を寄稿してもらったというシンプルなコンセプト。そのつくりからは純粋に「雑誌」というものの面白さが様々に伝わってきます。
まず巻頭の特集は先頃リバイバルなった映画『ハロルドとモード 少年は虹をわたる』。映画を見た複数の書き手たちから様々な感想が寄せられ、映画を観た人もまだの人もそそられる内容。それ以降のページはまさに散文に次ぐ散文。団地住まいを綴る者、プライベート読書会を語る者、子育てを記す父親、これまで読んできた本をひたすら100冊挙げる人、詩人のはなし音楽のはなし映画のはなし…そして全体を貫くキーになるのはやはり本を読むということ。「本」というより「読書という行為」を取り上げてみたかった、と編集・発行をつとめた大阪の貸本喫茶「ちょうちょぼっこ」のメンバー真治彩さんによるあとがきにもあるように、ページの合間から「読むということ」への愛が伝わります。それによって、読者はこの雑誌自体を「読む」ことも楽しめるはず。登場するのはさてどんな書き手か、それは開いてのお楽しみ。
中身も充実、表紙も美しく、デザインも洒落つつ、かつタイトルも秀逸なこの『ぽかん』は、インディーズでなくてはできない自由かつ細部までのこだわりが魅力的な実に雑誌らしい雑誌。読むこと観ることの好きな人たちへ贈ります。
ぽかん編集部 / 148mm × 210mm / 64P / ソフトカバー