手紙として差し出される愛情と、ユーモアたっぷりの語り口で送る千寿子さんによる紙上のリサイタル。
家族や家庭の出来事をヒントにした作品を多く残す作家、庄野潤三。
本書はそのパートナーである庄野千寿子さんが長女・夏子さんへ宛てた手紙をまとめた1冊。幸せが幸せを呼ぶよはよく言いますが、こういった愛情こもった遊び心から生まれるものなのでしょう。手紙にしたためられた事といえば、美味しいものや、日々のあんなことこんなこと、そしてあらゆるシチュエーションで伝えられる夏子さんへの感謝の気持ち。夏子さんへのまなざしを通して、庄野家を明るくらんらんと照らす千寿子さんが浮かび、たまに覗くイラストが可愛く朗らかな1冊です。(原口)