本書プロフィールでも「イモムシ画家」と紹介されている桃山鈴子さん。幼い頃から興味を持ち続けた自然の姿、その究極とも言える蝶や蛾の幼虫=イモムシたちをとらえた画集がこちらです。「クロメンガタスズメ」「ウスタビガ」「オオスカシバ」…。イモムシの展開図という設定で、想像の中で開いた姿を繊細かつ細密な筆で活写。日本画のスタイルと独自の自然画を融合させた精妙な世界が広がります。成虫と幼虫の姿の差の激しさ、その模様の美しさ、そして神秘性。そのすべてに恋をした一人の画家の情熱と静かな観察眼があいまった不思議な魅力に満ちたこの作品集。「やわらかな宇宙」という表現にもふさわしく、生命が充満したその姿態の完全な美をとらえ尽くした一冊です。個人制作の作品集『Insects』も好評だった桃山さん。本書ではさらにモノローグやエッセイも英訳と共に多く収録され、眺めるだけでなく読み応えもある内容に。イモムシ愛に満ちた至高の作です。