土地とのつながり、ものとのつながり、人とのつながり。それらによって形づくられた日々の営みの流路を丁寧に辿り、美しく切り取られた写真とレイアウトで紹介していきます。復刊第8号目となる本誌の特集は「そこだけにある喫茶店へ」。
今号の表紙をかざるのは、大きなユーカリの木が印象に残る、広島県・尾道市向島で珈琲と季節菓子を提供する喫茶室「nagi」。東京の喫茶店「蕪木」を営む蕪木祐介さんが引き継がれた、ネルドリップコーヒーと自家製チョコレートを主とする岩手県・盛岡市「羅針盤」。親子ではじまり、今では家族のような仲間たちと共に場所を築く、陶芸工房と喫茶室を共に構えた宮城県・仙台市「Satomi Kiln」。山の中に佇む、父から受け継いだ小屋で珈琲屋を営む大分県・耶馬溪町「豆岳珈琲」。日常の延長線上にある非日常さを実体験できる、レコードの音とコーヒーカップの重なる音と豆をさぐる音とが心地よい、大阪の路地裏に立つ「井尻珈琲焙煎所」など。
お馴染みの連載、食にまつわる「おいしい、って、どこ、から。」や、古材と古道具の店「リビゼン」東野華南子さんによる寄稿「今日も私は困ってる」も。
その喫茶店でしか目にできない景色、味わえないごはんの滋味深さ。たくさんの人々の手が加わり、時間と共に姿を変えながらもその街に根づいてゆく「喫茶店」という場所の様子は、足を運ぶたび静かな熱をもたらしてくれるように思います。