本は、実にシンプルです。「本」というものは、小さな子どもから、老人、過去の人はもちろん幅広く認識の及ぶ「もの」です。そこに文字なり画なりがありまして、それをまとめ綴じると本はできたとも言えましょう。しかし、本をつくるという事はどういう事なのでしょうか。
『十七時退勤社』というなんだか、風通しのよさそうなレーベルがございます。社長はとある出版社の営業さん。副社長は製本会社に勤める製本のプロ。屋号をつけたのは町の新刊書店に勤める書店員さん。インターン役はエア書店「いか文庫」の粕川さんに、謎のおじさん「どむか氏」なる人物が後援会会長に存在するという、大人のお遊びがふんだんに詰まったレーベルなのですが、実はそれぞれが本に携わるエキスパート。そんなレーベルより大本命とも言えるリトルプレスが刊行されました。
「製本と編集者」
副社長であり、本の造りに精通する笠井さんがインタビュアーとして、出版社から独立して「palmbooks」を立ち上げた加藤木礼さん、理系出身の作家であり編集者「代わりに読む人」友田とんさん、児童書の出版社や編集プロダクションを経て、現在はフリー編集者である森本美乃里さんを迎え、本に向かう輪郭を手繰り寄せ、携わってきた書籍や書き手にまつわるお話を聞き出します。本書の皆さんは、書籍を"作る"仕事をされていますが、冊子の最後には「担当した本を壊して学ぶ」というコーナーがあり、壊してわかることから造本への理解を深める試みも。製本作業をされる職人さんのかっこいい姿や時折愛らしい挿絵など、ビジュアル資料も楽しい充実の1冊。シリーズ化を目指してるとの記載あり。まずは本書を熟読して次回を待ちましょう。
(原口)