台北から花蓮、瑞穂温泉、台東、緑島へ。台湾を北から東へ辿った2015年十月の十日間。同じ旅程を行きながら別の視点と記憶で綴られた二つの旅行記。文筆と写真を中心に活動する檀上遼さんと、同人文集「締め切りの練習」を編集発行する篠原幸宏さんが、2017年に刊行・完売した『声はどこから』が文庫となって帰ってきました。出会った人々との会話や、起こったこと考えたことを実直でユーモラスな紀行文として書き綴った檀上さんと、曖昧な記憶に夢やフィクションなどを織り交ぜながら小説として綴った篠原さん。前作ですでに旅から二年を経過し書かれたそれぞれのテキストは、この文庫化に際しさらに大幅な加筆修正が施され、本書は「別の本ではないが、別の本みたいなもの」として編まれています。同じ時間、同じ場所、異なる記憶、そして重なる現在。旅をすることと思い出すこと、そして書くこと。響き合う複数の時間を読む、不可思議でまっとうな「旅行記」です。(涌上)
※本書は2017年に刊行した台湾旅行記『声はどこから Where is the Voice Coming From?』をもとに、判型を文庫サイズにし、写真に変更を加え、あらたに文章を追加改稿したものです。