京都で記者として活動した著者が様々な料理人たちに聞く「料理のこつ」。「いづう」「志る幸」「美々卯」「瓢亭」「たん熊」など、京都・関西を代表する錚々たる顔ぶれから伝授された煮魚や小鉢、揚げ物などのコツは実際的なものでありながら、ひとつひとつが独立した料理コラムのような趣をたたえて読んでいて楽しく、食事情も大きく変わってしまった今から見ても、基本的な料理法や素材選びなどはそのまま台所で参考になるものばかり。同時に、やはり家庭料理が今以上に重要でかつネットもない時代に、真のプロたちに聞くこのようなコツ控え帖は家庭の主婦にとってありがたかっただろうと想像されます。昭和40年代、書き手と読者の絆も見えてくるようなこの頃ならではの料理書の品格が感じられる一冊。デザイニングの良さも文化出版局らしい美しさです。古い本ですので、経年による小口や本文のシミ・変色等はありますが、読むには問題なく、古書としてはごく標準的な状態です。