武井武雄の刊本作品no.118。武井は本をひとつの芸術ととらえ、執筆、挿画などの構想から刷りや製本という制作にいたるまで、すべて自分自身の手で作り上げた小さな作品を「刊本」と呼び、100を超える名作を世に残しました。いずれも限られた読者のための数百部という限定数しか制作されず、日本の書物の歴史の中でも貴重な位置を占める作品ばかりです。内容は多岐にわたり、風刺的なものや民話調、あるいはどこか外国のコントのような雰囲気のモダンなものが多く、大人の寓話といった趣き。こちらはその118作目で、母親から出世の秘訣は袖の下だと散々きかされて育った男の数奇な運命が描かれています。まさに着物の袖がデザインされた表紙が素晴らしくユニークで、木版画による挿画が独特の和の味わいです。署名入り。シリアルナンバーは限定300部中232番。特に目立つ難はなく、標準的な状態ですが、古いものですので、経年による多少の劣化等は事前にご了承のうえお買い求め下さい。
著者:武井武雄 / ハードカバー / 97mm × 130mm / 1979年製作 / 自刻木版可憐判