トレードマークのステンカラーコートも着用せず、眉毛すらも描かれていなかったタンタンの最初の冒険先は、なんと共産主義という未知の世界、ソビエトでした。『20世紀』新聞の子ども版の編集をまかされたエルジェは、タンタンという少年記者をソビエトに派遣し、かの国の様子をドタバタコメディ調にレポートさせました。選挙とは名ばかりの民衆を無視した政治、国外に向けたキャンペーンとは裏腹に、ハリボテのように実体のない産業や経済がいささか誇張気味に描かれています。共産圏への畏怖が生み出した偏見も含まれており、エルジェが後に刊行をためらった曰く付きの1冊です。第二次大戦前のヨーロッパが見た共産国、というエキゾチックな旅情を楽しんで下さい。大判のハードカバー愛蔵版です。
著者:エルジェ / 出版社:福音館書店 / 230mm × 310mm / 144P / ハードカバー