1981年から83年にかけて『草月』に連載されていたものをまとめたもので、食べ物にまつわる昔の思い出を綴ったエッセイです。「天衣無縫」「純真無垢」と評される武田百合子独特の語り口によって、市電、お雛様、終戦、ロングスカートの女給仕、といった言葉が命を吹き込まれたように生き生きと動き出し、ノスタルジックでちょっと幻想的な昭和の東京が目の前によみがえるようです。純粋さとそれゆえの残酷さ、幼さとそれゆえの冷淡さ、そしてそのすべてが胸を刺す、一度読んだら忘れられない一冊です。表紙と挿し絵は野中ユリの銅版画で、こちらも研ぎ澄まされた感性が輝いています。
商品情報 |
著者 | 武田百合子 |
出版社 | ちくま文庫 |
サイズ | 105mm x 150mm |
その他 | 160P / ソフトカバー |