夜。ふと目をさましたあっちゃんの耳に何か声が聞こえてきます。それは下駄箱の中で履き物たちが話す声でした。ハイヒール、運動靴、長靴に小さい頃にはいていたおでかけ靴。下駄箱のひとつひとつの仕舞い場所をマンションの部屋に見立てれば、そこは靴たちの住まいです。そして彼らにもそれぞれの生活があり事情があり不満もあり。あっちゃんはその声をひとつひとつ聞いて解決するのです…。森洋子さん描く昭和の趣が残る部屋や建物、そして木枠の窓から見える月明かり。「げたばこ」という言葉もよく似合う、不思議さと懐かしさがいっぱいの一夜のファンタジー。擬人化された靴たちの暮らしの風景もぜひ目を凝らしてご覧ください。『まよなかのゆきだるま』などでもおなじみの「あっちゃん」が活躍する一連の作品の最新作です。森洋子さんの世界が好きな方はぜひお見逃しなく。こちらは「こどものとも」の一冊ですので、お届けするのは薄い雑誌形態のものとなります。