兵庫県出身の彫刻家、緒方敏明の作品集。小さな神殿を思わせる白い建物。中に入れば青い壁がひんやり静かだ。窓からは優しい光が入ってくる。階段を上がれば星空が近い…。彫刻で制作したある建物の中に入り込んで撮られた異色の写真集。それを見る者も共に建物の中に足を踏み入れ一歩一歩探りながら歩むうちに、自分が小さな訪問者になったような気持ちになります。建物という箱の中はまるで宇宙のようで海のようで。床の感触、差す光、濡れているようにも見える質感の柔らかさと独特の美しさ。彫刻を外からだけでなく内部からも照射し眺め尽くす。散りばめられた散文とともにまるごと舞台のように楽しめる一冊。蛇腹状に折り畳まれた部分を用いて、作者の創作世界を紹介した冊子をくるむという二層仕立てのユニークな造本も魅力のひとつです。和歌山県の版元・道音舎から。2024年発行第一刷。

緒方敏明プロフィール
1957年、兵庫県西宮市に生まれる。1989年東京藝術大学彫刻家卒業。絵画、音楽、詩、舞台美術などの表現を並行。小さな建物の彫刻をつくるようになる。1995年頃「建物彫刻」というコトバが想い浮かぶ。

＊2024年9月に当店ギャラリーアンフェールにて、本作の著者・緒方敏明さんの展示が開催されます。ぜひご覧ください。
「銀河講堂」　2024年9月3日〜9月16日　11~19時（最終日は15時まで）