土、それは、世界中で最も身近にあるもののひとつ。
ですが一重に土と言っても、その性質は土地や環境に違い、文化により用途、創造は異なるもの。
身近にあるものだからこそ広域なる世界が存在し、多層なフレームで歴史が織りなされるのでしょう。
本書はアート、歴史、建築、民俗学など、ジャンルレスにアプローチし知の活力で結びつけ、土とは何かと多角的に考察した1冊です。
原土採掘から陶器製造の過程はもちろん、粘土の採掘場のある原料山に赴き記されたテキストや写真。土を原料とする器の起源から食卓芸術とまで称される程となった西洋陶器略歴。土と左官から見た日本の建築史。写真家による、テキストを必要としないチャプターや土と向き合うアートを訪ねたものなど、日々の生活や道具の中にある”土”の理解を深める本です。
図版資料も非常に鮮明な印刷で、エルメス財団監修の元、内実共に無駄がなくゆったりとした美しい本に仕上がっております。
書棚に美しい1冊を。
(原口)