1962年、同僚だったイラストレーター宇野亜喜良と横尾忠則。この二人の発案からはじまった絵本制作の企画が形となり生まれたのがこの「海の小娘」でした。本書は60年の時を超えてよみがえったその復刻版となります。祭りが催されている港町で出会った青年と少女。そのみずみずしくも不思議な邂逅が、横尾→宇野の順で描いたイラストレーションによって鮮やかに描き出され、そしてちょうど物語の真ん中で二人の絵は交錯しまた離れてゆく。横尾が赤と黒、宇野が青と黒をつかって描くことで、付属のセロファンによって任意の線を消しながら読むことができるという実験的な構成も読むものに目眩のような感覚を引き起こします。ストーリーを手がけたのはデザイン事務所で二人の先輩であったという梶祐輔。三人の才能が結実し、多重奏にも似た世界を響かせたデザイン史に残る傑作。新たな驚きと発見とともにお楽しみください。跋文への寄稿は山城隆一。