20世紀初頭のオーストリアで生まれた、ウィーン分離派など新しい芸術と工芸の潮流のメンバーであったオットー・プルッチャー。本書はそのプルッチャーが自身の娘のために集めた、児童書をはじめとする紙媒体のコレクションを集めた一冊です。時代は1900年から1938年まで。当時のウィーンという場所、そして世紀の変わり目の空気を色濃く反映し、いずれも歴史的にも文化的にも非常に貴重なラインナップとなっています。チェシュカ描くニーベルンゲン伝説、ビアズレー描くオスカー・ワイルド、オスカー・ラスケのティル・オイレンシュピーゲル、リヒャルト・テシュナー、マリー・クラマー、アーサー・ラッカム…。綺羅星のごとき作品の数々が鮮やかなカラーで写しだされたページは本当に美しく豪華。書影やイラストレーション、カード類なども含め多数の図版が楽しめる、資料としてもビジュアルブックとしても様々な点で貴重な一冊です。タイトルの「Golden Thread」は直訳すれば黄金の糸。この本に掲載された100年以上前の絵本やカードたちは、まるで細くとも強い糸のように我々を20世紀の始まりのウィーンへと導いてくれるでしょう。発行はイタリアのコライーニ社。テキストはイタリア語と英語の併記となっています。