本は「窓」のようだとつねづね考えています。扉、ではなく窓。
ドアノブを回してすぐに別の世界に繰り出せる装置ではないけれど、
窓があれば今いる部屋とは違った世界を感じることができます。
窓は、外の世界の優しい風や照り返す強い日差し、雨の湿った匂いや、
木々花々のあざやかな景色を部屋に届けてくれるのです。
そして本というのは、時空を超えて色とりどりの景色や風、光を届けてくれる素晴らしい窓だと思います。
(「本という窓」より)
奈良県の山村、東吉野村に位置する私設図書館「ルチャ・リブロ」。当館の司書である青木美青子さんによる、ルチャ・リブロでの日常の記録と内なるちいさな声をおさめたエッセイ集。生きづらさ、ままならない心身と向き合い暮らす日々と、つねに隣り合っていた「本」という存在。「支えられる立場」から、司書という役割を通じ「支える立場」へ。人と人の出会いを生み出す「図書館」という場所から読書とケアの関係性を見つめます。それぞれの困難を抱えて訪れる人々に、本という窓を通し、生声を発さない対話を差し出していく。他社と伴走し合い生きていくこと、フィジカルなものが齎す効用とその豊かさを丁寧に汲み上げた一冊。(韓)