三島由紀夫が昭和32年〜33年にかけてアメリカをはじめ、中南米やヨーロッパを旅した際に得られた見聞を活写した表題作ほか、主にアメリカでの体験を綴った紀行文で構成された一冊。「ほんもののヨーロッパ」より中米などに残された「やつれた息もたえだえなヨーロッパ」を愛する、という言葉通り、どこか翳りのある、過去に生きているような街を好むその視点が縦横にいかされたユニークなルポ。異国に対して「善意の誤解者」と己を認じながらも、文化、芸術、風土、歴史などを特有の観点で論じる感性が冴える特異な紀行文集です。「繪本」とタイトルにつけつつも冒頭のグラビア以外にイラストレーションなどはありませんが、全体にユーモアとゆとりが感じられる空気が楽しい。時代を感じさせる本文の書体も美しく、簡易な函装も洒落た雰囲気です。函の上下や背の角部分に相応の劣化あり、本体の見返し部分に黄変あり。それ以外も経年によるくたびれはみられますが、本文はほぼ問題なく、おおむね古書として標準的な状態です。諸々ご了解の上ご購入ください。