一匹のミミズクが住む、静かな詩集をご存じでしょうか。
本書は詩人・長田弘さんが残した寛ぎのための詩集。
世界がうつくしいことは、自身の眼を通して知覚する必要があるのだと、誇張や装飾を必要としない素朴な言葉で綴られ、忘れがたいもの、抗いたい摂理、孤独や淋しさを薄い光で覆うよう。
装画は、ドイツ・ロマン主義絵画を代表するカスパー・ダーヴィド・フリードリヒ作「棺桶とミミズクのいる風景」。死を意識した画家の晩年に登場する使者として描かれたミミズクは、詩の間に度々登場します。人間の孤独を、生きてこの世に在ることの切なさを、この大きなミミズクは頁の間にてただじっと佇みます。
静寂の中、ゆっくりと自身を祈るよう読み進めたい1冊です。(原口)