出版元のナナロク社さん主催の短歌作品公募企画「第2回 ナナロク社 あたらしい歌集選考会」より、歌人の岡野大嗣さんが選出した、多賀盛剛さんの第1歌集。
全てひらがなで綴られた歌は、パッと見ただけで理解するのは難しく、1音ずつ読むことで言葉の輪郭が見えてきて、捉えどころのない生活の様が浮き上がってきます。それは、多賀さんが暮らしの中で拾い集めた感覚をとつとつと語り、その話を耳を澄まして聞いているかのようです。さらにページを捲りそれぞれの歌を連ねて読むことで、日常の情景から不思議なおとぎ話が釣+無我れてゆくような作品もあり、次第に自分の中にある幼心と対峙し、空想の世界を広げてみようと思わせてくれます。また、字が読めるようになったお子様と一緒に読んで、言葉の重なりの面白さやリズムを感じるのも楽しそうです。
鈴木千佳子さんによる装丁もたおやかで、黄金色に輝くまどろみのようなとても柔らかいドローイングが描かれており、ページをめくるごとに心がほぐれてゆく作品です。
日々の生活で一息つくように、ぱらっとめくり続けてほしいそんな本です。