伝統的版画から日本の近代版画へ。20世紀初頭はモダンな雰囲気をまとった新しい版画作品が多く生み出された時代でもありました。橋口五葉や川瀬巴水ら明治からの「新版画」。その後に続く憂いを帯びたニュアンスを輝かせた竹久夢二や恩地孝四郎、小村雪岱。そして川西英や小泉癸巳男ら都市を背景としたモダンな作風で魅了した版画家たち。これら30人近いアーティストたちの100を超える作品群は、美の捉え方や技法の変遷だけでなく、日本における時代の移り変わりと都市の発展も内包したモダニズムの勃興を俯瞰する内容ともなっています。その見応えの素晴らしさ、なによりも和紙を思わせる繊細で薄い紙に印刷された特有の美をじっくりとお楽しみください。オランダ人蒐集家エリス・ウェッセルスのコレクションを展示したアムステルダム国立美術館での展覧会図録でもある本書。桜と緑の葉を模したかのようなブックデザイン、巻末に掲載された様々な作品のクローズアップなど、独特のエディトリアルデザインも随所に光る名品です。テキストは英語。