70年代、フランスで日本語教師をしていた頃、あちこちに出かけていたムッシウ・ヤマダ。その旅行記は、かつて『旅のなかの旅』、『太陽の門をくぐって』などの著作で紹介されてきました。それらの作を再編集していまふたたび一冊に。ギリシャ行きのツアー、友人夫婦と出かけたスペイン旅行、そして今回二度目の単行本収録となる「ローマ日記」と、本書には三編が収録されています。お金はかけずに、知識とエスプリ、そして人との出会いと少しの運にまかせた旅模様。その、淋しさとほの明るさが入り混じった独特の文体は読むものを魅了します。50年近い歳月を経たあの頃の旅。距離の遠さ、時の遠さ。様々な意味で深みを感じ、そしてやはり純粋にその文の味わいと面白みを感じられる一冊です。