2008年に府中市美術館で開催された展覧会『ゆかいな木版画 その、柔らかな微笑み』
同美術館所蔵の木版画を中心に、個人蔵の蔵書票まで竹久夢二、川上澄生、前川千帆、稲垣知雄、など大正〜昭和初期に活動した浪漫溢れる作家陣の作品を全ページカラーでまとめた木版画集です。
明治期後半、それまでの浮世絵系木版画とは大きく異なる、新しい版画がつくられるようになりました。自らの絵を自らで彫り、そして自ら紙へ刷る作品は「自画自刻自刷」と呼ばれ、独自の彫りや刷りの創意工夫による、多様な世界。木に図画を施し、紙に刷るという、シンプルな手法ですが、個性の味わいの広がる世界はなんて親しみ深くのびやかなのでしょう。
木版画により表現された街角や女性、静物といったモチーフはシンプルで素朴な色彩、木肌の活きた画面など、当時を代表した作家陣のまなざし豊かな1冊です。
(原口)