「今をおいては二度とこんな無鉄砲な勇気は出てこないだろう」と語りながら告白を始めた内容は、若き日の十数年間をコカインを始めとする麻薬に惑溺した時期を過ごした著者みずからの体験を振り返るもの。大正時代、翻訳で華やかな文壇デビューを飾った平野青年。その日常がちょっとしたきっかけで墜ちて行く。その導入部から引き込まれ、続く数々の麻薬遍歴には悲壮と悔恨と不思議な軽みが入り混じり独特の文章世界を作り上げています。「話の特集」に連載され話題を呼んだ一作。和田誠による黒を基調とする装丁、見返し、本文イラストが豪華でこれまた魅力です。小口に若干シミあり、ほか帯にイタミあり、函の角にカスレあり。諸々ご理解のうえお求めください。