1935年、ロンドン発の出版社ペンギンブックス。本書はその草創期、ドイツの出版社「インゼルブックス」をモデルに刊行された「キングペンギンブックス」シリーズの中の1冊。洗練されたデザインと専門的なテキスト、テーマや装丁の上質な造りによるこちらのシリーズは1940年〜1960頃までの間に76タイトルまで出版されました。
さて、こちらはそのキングペンギンブックスシリーズ NO.31「1800年〜1900年の英国挿絵集」
機械印刷が発明されるまで、英国では修道士の職人によって写本がなされておりました。現代の精度・スピードとは対局にありながら、優れた芸術性を伴った生涯の労働として。しかしそういった手法で出来た本はとても高価で一部の人にしか開かれない情報という側面も。複製技術の発達で、本はより多くの人の手に渡るものとして、様々な本が生まれ、そうしてテキストに添える図画もより多様になります。英国の挿絵の歴史として、木版画や銅版画など技術的な歴史に加え、作家の語る歴史として英国の作家、ウイリアム・モリスの言葉が引用されていたり、一部の表現に留まらない挿絵世界の広がりが語られており、また、W・ブレイク、ピアズリー、ルイス・キャロルによる「アリス」のオリジナルなど、挿絵を眺めるだけでも面白き1冊。
貴重なビジュアル資料は博物館はじめ愛書家たちのたくさんの協力や取材を経ており、現在のように情報のやりとりに速度ある時代の代物ではないことを思うとその姿も感慨深いですね。
大変古いものでありますので、それなりにヤケ・傷等のダメージがあります。※保護の為、取り外し可能な透明のカバーを付け管理しております。
(原口)