時を超えて。生まれ育った京都へのおもい。こぼれだす笑い。
『乙女の密告』で芥川賞を受賞。2017年に早逝した著者によるエッセイ55 篇。岸本佐知子との「交換日記」併録。
-palmbooksより
注目の出版社「palmbooks」初の刊行書籍であり、エッセイの名手と知られた著者初のエッセイ集。
今日起こった出来事、明日起こるかもしれない出来事、こんな風にリズミカルに描かれるとしたら、まんざらじゃない。そんな愛情深いエッセイの数々は、赤染さんのお調子と軽快な会話がチャームポイント。
とある日は、給湯室での新妻ごっこ。熱血漢の師匠に教わる盆踊りでは「ええか。右を掘れ! 左を掘れ!」との掛け声を受け、でもなかなかうまく踊れない。怒りだす師匠は次第にヒートアップし、炭坑節一筋60年以上の師匠は叫ぶ、「くそーっ! 入れ歯が飛び出しそうじゃ!」
いくら教えても指で計算をする「ちび君の計算方法」では、静かで落ち着いた、ちいさなエールをおくります。
こぼれるまなざしに、じーんと広がる暖かなものがたくさん詰まった楽し気でさわやかな1冊。
著者プロフィール
赤染晶子 (アカゾメアキコ) (著/文)
1974年京都府生まれ。京都外国語大学卒業後、北海道大学大学院博士課程中退。2004年「初子さん」で第99回文學界新人賞を受賞。2010年、外国語大学を舞台に「アンネの日記」を題材にしたスピーチコンテストをめぐる「乙女の密告」で第143回芥川賞を受賞。著書に『うつつ うつら』『乙女の密告』『WANTED!! かい人 21 面相』がある。2017 年急性肺炎により永眠。
(原口)