漢民族以外に55の少数民族が公認されている多民族国家中国。その中で、少数民族の暮しと工芸に焦点を当てその文化が紹介されている本書。
中国最大の少数民族「チワン族」、精巧な造りの銀製飾りと洗練された民族衣装が特徴的な「ミャオ族」と「ペー族」、当地のシャーマニズムとアニミズムを起源としたトンパ教を信仰し、宗教的な職能者のみが使用していた独自の象形文字・トンパ文字を保有する「ナシ族」など、中国の民俗分布と生活、創る工芸品や楽器、文字など多彩な文化を紹介。現代に至るまで「近代化」の名の元に様々な歴史を経て、文化の形も変わる今に残す貴重な資料群。その1つ1つに意味や脈が生きています。例えば、子供をおんぶする”背負い帯”もそれぞれの民族によって多様です。その手の込んだ刺繍は人目につき、それは子供を大切にする”工夫”と”気持ち”のあらわれであること。受け継がれてきた技術による精巧な造りの銀製装飾品の見開きページは圧巻です。優良品質の木材の産地、雲南省剣川地域の木工芸品や生活の道具である竹や金属で作る工芸品など、時間をかけて大切に作られたものの尊さ伝わる手仕事による良品の数々は、135頁中の80頁がカラー頁というビジュアル資料豊富にまとめあげられております。
世界の民族文化・文化人類学を研究・展示する機関である国立民俗学博物館編集による、文化的多様さと色彩豊な本書を是非お楽しみくださいませ。
(原口)