長い時間をかけて伝承された形や模様。それらは、泥粘土や石、木や竹、木綿布、葦、羊皮紙、身近に存在する素材を用いて、市井の人々が手作りして伝えてきました。
こちらの1冊は、そんな品々の中より、中国各地で芽生え伝え残されてきた貴重な玩具420点を、わかりやすく丁寧な解説とともにまとめあげた大変珍しく貴重な1冊です。
「中国民衆玩具」のその多くは寺院や、道観(道教寺院)で売られる手土産でもありました。持ち主や家族に幸福をもたらす吉祥物として大切に扱われ、暮らしを彩ってきた玩具たち。
伝統的なデザインと願いのこもったメッセージは、寺院などで売られることで護符や霊物となり、神仏と人を結ぶ役割も担ってきました。
新石器時代から長い歳月を経て、様々な文化を取り込み変容をとげ発展してきた玩具の、人々が愛しみ伝承してきた形とも言えましょう。
著者である尾崎織女さんは、兵庫県姫路市にある日本玩具博物館で学芸員をされております。広大な大地を持つ中国の各地で芽生え、実用され、また姿の肝にせまりながらも親しみ深い玩具という存在を暮らしや歴史的観点より余すことなく伝える、その詳細でありながらも無駄のない解説は、読みごたえがあります。
巻末には用語集・主な登場人物の紹介など、理解を助けてくれる叙説も。