この本に書かれているのは「手洗い」、つまり手を洗う行為についての叙事詩です。
この本には、詩の言葉で、手洗いについてのさまざまな事象や、手の洗い方、歴史、物語が書かれています。(本文より)
詩を中心とした言語作品の多様なあり方を探求し、出版物のほか「言葉」との関わりを軸にしたインスタレーション・パフォーマンスを制作するヴァーバル・アート・ユニット「TOLTA(トルタ)」より刊行された一冊。
新型コロナウィルスの蔓延により、さまざまな変化を強いられてきた私たちの生活や社会。全自動手洗いマシン「テノウオ」が出現した今よりちょっと先の未来を舞台に、「手を洗うこと」という行為についてのハウツー、統計や歴史、省察、記憶と物語が綴られています。ほとんどの場合、他人の目に触れられることなく、アピールする行為でもない、自分自身で完結する行動である「手洗い」について。手を洗うことは他者を否定しない。そもそも手という対象をじっくりと見つめ直したとき、どのような思いが溢れ、何が見えてくるのか。捉えどころもなく曖昧な日常を描いているからこそ、暮らす今についてより一層深く思考をめぐらせる。ひとつの途切れない音楽でもあるようなポップかつシリアスな現代の叙事詩です。
【目次】
はじめに:なぜ「新しい手洗い」なのか
Part1:新しい手洗いのために
1:手を洗うたびに指の数を数えること
2:外国語の発音を練習するように指と指の間を丁寧に洗うこと
3:手と手が重なり合うときのもっとも美しい形を記憶すること
4:せっけんの泡立つ音や水の流れる音によく耳をすますこと
5:安全をたしかめ、落ち着いたら、もう一度最初から手洗いをしてよい
6:洗うべきときに洗えなかった手をよく覚えておくこと
7:洗うたびにあなたの手は別のものになる
Part2:さらに新しい手洗いのために