ロバート・ルイス・スティーブンソンの代表作のひとつ、二重人格を描いた作品として著名な「ジキルとハイド」。
原書は文学界における重要な作品として、その着想を元に実にさまざまな形態で作品が受け継がれてきました。
本書もそんな作品のひとつと言えましょう。説得力ある絵に相応しいスクエア型の大きめの判型、タイトル部分は金の箔押し加工が施されており、大変瀟洒な造りの大人向けの絵本となっております。
絵を担当しているリュドヴィック・ドバ−ムはフランスのイラストレーター、またハンドデシネ、絵本画家です。確かな技術と品の良さ際立つ世界観により、人間の内面を描き出しながらも、物語の不均衡滲み出すなんとも言えない空気を、魅力として落とし込みます。
「善悪」というものは、まるで対局にありうる様に見えますが、物事の実際は紙一重の距離で存在し、完全な分離など不可能なものなのでしょう。強烈な欲望に対峙するには、果たして何が有効なのか、永遠の問いを描いた名作。絵本となった「ジキル博士とハイド氏」を是非お楽しみくださいませ。(原口)