装丁家・栃折久美子が「小さな自分だけの本を作ってみたい」と思う人に向けて制作した「私家版づくり」。初版が1996年、当時の身近な道具はやはりワードプロセッサでした。そのワープロでできる限りのフォントやノンブル選択、余白などのページデザインから紙選び、そして製本に至るまで詳細に綴られた制作過程は、趣味の私家版づくりの枠を超えて、製本というものを知りたい人にも非常に参考になる内容。ワープロからPCへと道具が移行しても本作りの原点という意味では教えられることの多い一冊です。古書などで心惹かれるデザインに「装丁・栃折久美子」と書かれているのを見る機会も多いと思いますが、本書は、基本的にはモノクロで実践的な内容が多い構成ながら、しっかりと本づくりの基礎をこの稀有な装丁家から指南してもらえる贅沢な書といえるでしょう。自分だけのほんの数冊のために。特に目立つ難はなく、古書として標準的な状態です。