「ことばが生まれる場所」をテーマに自作詩を題材とした書作品を制作・発表、また岐阜県郡上市最奥の集落・石徹白(いとしろ)にて“全人的な「生」を養うための場”「あわ居」を主宰する著者による、詩、エッセイ、評論をまとめた一冊。
内田百間の随筆の体感、意味よりも「よろこび」を見出すこと、「歴史の上にいるという感覚」について、悲劇を明るさへと昇華する技術としてのアート、愛着と場所から生まれる「住む」という営み、「世界の創造」としての労働や「関係性=縁」としての経済、隣人が残した無形の手触りの記憶について、思い出さねばならない「川へ入ること」。
神谷美恵子、熊谷守一、松本竣介、ジョージア・オキーフ、ルイス・バラガン、ピーター・ズンドー、増山たづ子、大原治雄、牛腸茂雄、三木清、唐木順三、西田幾多郎、内山節、ティム・インゴルド、etc…。様々なことばを日々読むことやアートに触れ続けることに導かれた思索、石徹白での古民家改修という生活の必要から生じた労働、出会い、そして季節の移ろいや自然のなかに生まれる詩。エッセイやそれにも満たない端書き、書物の引用など様々な形式の文章の堆積は、「生きること」を「ことば」を通じてひらいていく実践の記録そのもの。その間にも季節は流れ、完成や終着に至ることのない途上は続きます。ことばのもつ意味と造形を同時にフィーチャーするようなカバーデザインにもこだわりと必然性が感じられます。限定200部。(涌上)