いっていることは うそでも
うそをつく きもちは ほんとうなんだ
1988年に発表された谷川俊太郎さんの詩「うそ」に、イラストレーター・中山信一さんが絵をつけた一冊。犬の散歩をしながら、地面で飴玉を運ぶアリ達を眺めながら、雨宿りをしながら、「ぼく」は考えます。
この世はほんとのことより、うそであふれている。でも、どうして人はうそをつくのだろうか。そもそも[ついていいうそ]と[ついてはいけないうそ]、[いいうそ]と[悪いうそ]ってあるのだろうか。あるとすれば、その違いはなんだろう。
谷川さんの詩と中山さんの絵の、近過ぎず遠過ぎない絶妙な距離感。そこには「ぼく」の割り切れない心と、答えのない問いについて考えることの、内向きの思考の階段を降りて行くような、深く濃密な時間の経過が確かにあります。
繰り返し読むたびに自分自身に問いかける機会を与えてくれる、哲学の絵本です。