「私たちが目にしている野菜の姿は、どれも命の途中のほんのひとコマ。」
植物観察家・鈴木純さん。
駅前のロータリーや街路樹など、路上の植物を観察したデビュー作『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』は、普段見かける草木の、驚くような生態や構造をわかりやすく紹介した一冊でした。次に、鈴木純さんが注目したのは「野菜」です。
八百屋やスーパーに並んでいる野菜。綺麗にパックされた姿にも「前後」があります。収穫する作物としてではなく、植物の成長として観察したらどうなるか。種から生まれて、育ち、枯れ、また種へ。トマト、キュウリ、トウモロコシなど、慣れ親しんだ野菜の誕生の瞬間から最後まで、6年かけて撮影された膨大な写真とともに追っていく臨場感に溢れる一冊です。家庭菜園などをしていても、収穫時期を逸した野菜の姿を見る機会は、そうありません。なかでもナスの成長後の姿は衝撃的でした。ページ数、写真の量、詳細なテキスト。これは新しい形の「図鑑」だと言って良いでしょう。読めば、食卓に並ぶ野菜の見え方が変わります。