おれたちはみな農民である ずゐぶん忙しくて仕事もつらい
もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい(中略)
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する(中略)
新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである
われらは世界のまことの幸福を索ねよう 求道すでに道である ― 農民芸術概論綱要「序論」
計60の詩編を採録
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宮沢賢治の教えは、いま、一層の輝きを放ち、その普遍性は揺らがない。土に触れる手、蔓延る生命。個人から拡張し、胎動する銀河。壮大なスケールで描かれた、至高の芸術論「農民芸術概論綱要」。工業化する社会へ警鐘を鳴らしつつ、自らは農民であるという確かな誇りをもって論じられた、生活、宗教、学問、芸術、労働、科学について。新たな時代を生きる私たちへ、あらためて届けられた言葉たち。
「われらに要るものは銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である」
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本論に加え、「農民芸術」の名を冠する他2編と、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」で知られる、通称「雨ニモマケズ手帖」に収められた詩や、最晩年、病床に伏しながら書かれたと言われる「疾中」、さらに生前未発表の詩作集「詩ノート」より撰集した数編と、学生に向けた鼓舞激励のメッセージ「生徒諸君に寄せる」を収録。これまでになく研ぎ澄まされた、賢治の新たな選集。
発行、八耀堂。
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少部数・直接取引の形態をとり、文化的・環境的・地域経済的に持続可能な出版活動を模索する、長野の出版社。編集は、八耀堂の岡澤浩太郎さん。装画は、奄美大島在住の絵本作家、ミロコマチコさん。装丁は、須山悠里さん。シンプルで美しい造本にもぜひ注目いただきたい一冊。