熊本にゆかりのある書き手たちの文章を束ね、「職人の自主的な共同組織」を意味する“アルテリ”をタイトルに冠した文芸誌。「どこ？」とだけ書かれた表紙が印象的な九号。表紙からはじまる詩を寄せたのは、本誌初登場の谷川俊太郎さん。誌名である「アルテリ」から浮かんだというその詩作のほか、希死念慮に苦しむ人々に向け自身の電話番号を公開している坂口恭平さんによるそのやりとりの一記録とも言える戯曲、吉本由美さん、田尻久子さん、そして石牟礼道子による猫にまつわるエッセイ、亡き父との忘れがたいやり取りを軽快な文体で書く平田洋介さんの小文、水俣に在住し山あいの集落・黒岩を撮影してきた豊田有希さんによる写真とテキスト、そして渡辺京二さんへの二万字インタビュー第三弾なども収めます。アルテリ恒例、一篇を読み終えるごとに顔を見せる猫たちの豊かな表情もあわせてお楽しみください。（涌上）