70年代、新宿に誕生した産婦人科と精神科を併せたいっぷう変わった病院「めだか診療所」。それを立ち上げた上野博正という一人の医師の人生と仕事を本書では振り返ります。患者との対話を大切にし、通常の診察では考えられないくらい話し込み、信頼関係を築きお産に臨む。そういった独特のポリシーを掲げ、ウーマンリブ真っ盛りの時代、主流の産み方に違和感を感じる女性たちを多く受け入れ、独自の価値観とスタイルを貫いた上野医師。のちに「思想の科学社」の社長に就任し、鶴見俊輔、加藤典洋らとも親しく交わったこの人物のユニークさ、自由さ、不思議さなどを、妻の立場から著者が話しSUREのメンバーが聞くという、おなじみの座談の形ならではの肉声による語りが面白い。女性にとってお産という大事業を受け止め緩めてくれる。言葉のやりとりを重視し、そこから安心して命のやりとりもなされる。そんな、ある意味前衛的で包容力に満ちた産院がかつてあった、その生きた証言をどうぞご覧ください。巻末に付せられた「めだか診療所 開業時のパンフレット」も非常に興味深く必見です。
商品情報 |
著者 | 余川典子 |
出版社 | 編集グループSURE |
サイズ | 130mm x 188mm |
ページ数 | 207P |
その他 | ソフトカバー |