"友達の定義について 話す午後 ゆっくり君が 友達になる"
"てのひらに 血豆をつくる鉄棒に 無数の宝石 産み付ける雨"
"拓けども 拓けどもまだ日光も 言葉も届かぬ 密林を持つ"
"100年後 あなたも わたしもいない日に 今日とおんなじ 朝陽がのぼる"
小説家の土門 蘭と、イラストレーターの寺田マユミによる歌集であり画集でもある一冊『100年後 あなたも わたしも いない日に』。瞬間の記憶や感情、シーンを書き留めるように詠まれた歌、タテヨコ様々な構図で場面を切り取ったドラマティックなイラスト。短歌とイラストそれぞれの表現に共通する手法「トリミング」をテーマに自由なレイアウトとコマ割りで展開されるページの連続は、繰るごとに異なる世界を生きるような新鮮さを読み手にもたらします。
紙そのものにもトリミングを施し小窓のような穴を設け、前後のページを垣間見、その仕掛けを楽しみながら読み進めるというアートブックのようなデザインは、言葉とイラストの相互効果、紙の本の持つ可能性を感じさせるもの。土門さんのテキスト、寺田さんのイラストのみで構成されたページ、書物の中に時の流れを感じさせる意匠、二人へのインタビューなど、アイデアに満ちた編集と構成にもご注目ください。(涌上)