ドイツの風刺画家・プラウエンのとびきり愛らしくユーモアに満ちた名作「おとうさんとぼく」が新装版となって岩波少年文庫に帰ってきました。おひげを生やした「Vater(おとうさん)」とその「Sohn(息子)」が繰り広げる愉快な日々。散歩し、歌い、クリスマスを過ごし、笑いあう。そこは苦しいことも嫌なことも存在しない彼らだけの楽園。セリフは一切なく、あるのはただ微笑みだけ。ナチスの弾劾によって命を落とした作者の人生とは裏腹な、その底ぬけに明るい姿とちょっぴりの風刺は今も世界中で愛されています。ドイツではレクラム文庫にも入り、国民的な漫画として親しまれるこの「おとうさんとぼく」。サイレントのコミカルな映画を見る気持ちで、あるいは思いっきり笑える時代に生きていることに思いを馳せつつ読んでみてはいかがでしょう。巻末にはプラウエンを偲ぶケストナーのエッセイが収録されています。