ブルトンをはじめ、多くのダダイスト、シュルレアリストから激奨された異色の作家、レーモン・ルーセル。その代表作『アフリカの印象』で存分に披露された、その多彩かつ執拗なまでの言葉遊びは、あらゆる作家に影響を与え、一世紀にわたり読み継がれてきました。そして現代の日本にも大きく感化された者がひとり。建築家、音楽家、作家、あらゆる枠を超えて活動する坂口恭平が、ルーセルにインスパイアされて書いた百枚のドローイングを中心に、新訳を付した抄訳版が九州の出版社伽鹿舎から刊行されました。訳はゾラの作品の翻訳などで知られる国分俊宏。何重にも帯を巻いたようなその造本もさることながら、訳とともにフランス語の原文が収録されていたり、風変わりな一冊です。かつて『アフリカの印象』に挑み、挫折した方には良き手引きとなることでしょう。あとがき、いとうせいこう。