良質な書物を世に送り出してきた版元・文化出版局を経て、装丁家、造本作家としても活躍する著者の本への思いが結実した本書には、タイトルの通り様々な「本の夢」が詰まっています。文学少女だった日々、そこで出会った美しい詩篇や人々、立原道造やブラッドベリなど影響を受けた忘れ得ない文学作品についてなど、過ぎし日々を懐かしむとともに、そこから霊感を得て生まれた数々のオリジナルな書物たちを丁寧に紹介してゆく内容は、書物を愛する一人の女性の夢と生が静かに息づいているかのよう。文学としての書物、対象としての本の美、それらを合わせながら、本というものの持つ抗いがたい魅力を静かに伝える様は、まるで本自体が見る夢に迷い込んだかのような気にもさせられます。記憶の中の読書を掘り起こしゆったりと語る口調も味わい深い、これも本にまつわる美しい書物のひとつ。巻末には豆本作りの参考となる、紙やパーツの紹介ページもあり実用性も帯びています。