おばあさんがなけなしの小麦粉でこしらえたパンに命が宿って、ころころと逃げ出します。行く手をはばむ動物たちをかいくぐり、最後にたどり着いたのは…。「おだんごぱん」などの邦訳でも知られるロシア民話でおなじみのこの可愛らしいパンの物語が、人形絵本として生まれ変わりました。人形制作にはYoko-Bonさん。その懐かしい佇まいは、まるで土方重巳、飯沢匡によるあの「トツパンの人形絵本」を彷彿とさせる雰囲気で、昔からのファンだけでなく、人形や人形絵本そのものを愛する人々も大いに魅了するであろう素晴らしさ。今の時代によくここまであの往年の人形絵本の世界を再現できたものと驚きを禁じえませんが、好きな人ならどうしたって手に取らずにはいられない、そんな愛くるしい魅力がいっぱいの作品です。土方・飯沢コンビに興味がある方もぜひご覧ください。版元はロシア文学を紹介し続けてきた群像社という点も、納得かつ嬉しい一冊です。