大正から昭和にかけて活躍した声楽家、文筆家の丹いね子。もはや一部の好事家にしかその存在を知られていませんが、当時の日本のモダンガールの代表的存在でした。こちらはいね子自身が大衆向けに創刊した雑誌『婦人文芸』にて連載されていたエッセイ、ゴシップ、小説、評論などをまとめた一冊。あけすけな口語体の文章で、都市を往来する男たちを腐したり、「公娼廃止」に一言申したりなど、切れ味たっぷりの読み物目白押しです。ライバル歌手の原信子にフランス料理に招かれ、食後に飲んだペパーミントで下痢をし、中毒性急性咽喉炎と診断され、世を騒がせた「水銀事件」についての原信子宛ての公開状なんかも載っています。戦前女子古本の世界をお楽しみください。ちなみにこちらの装丁は浪漫画家、竹久夢二となっております。函、本体ともスレございますが、経年を考慮するとまずまずの状態です。