明治42年生まれの著者が晩年、変わりゆく日本人の生活を目前に、たすきを渡すがごとく書き綴った、四季折々の暮らしの知恵。日本料理の名手であった母にくり返ししつけられたフライパンの手入れ、ポンプの井戸水で思い出す繊細の記憶、夏の暑いおり食前に飲むトマトのスープ。行間より品性の漂う文章、佐藤達雄による扉絵、エッセイごとに添えられる素朴なモノクロ写真、シンプルながら美しい造本。近年文庫本として甦りましたが、当店ではあえて写真の美しい、昭和51年に初版が刊行された函入りの単行本版で。