わからなくたって、好きになっていいんだよ
伸びきったカップめん、湯がいたえだまめ、みぞれのアイス。学校での出来事やお母さんとの会話、天気のこと。なんでもない、そこらにある素朴な疑問をもって家を訪れる小学生の「きみ」に、おじさんの「ぼく」はこんな詩があるよといって今日も本を差しだす。
こどもの素朴な問や感性に対して添えられるのは、まど・みちお、長田弘、萩原朔太郎、石垣りん、辻征夫らの20篇の詩。小説の形をとりながら、名詩を紹介する一冊です。著者は自身も詩人であり、絵本の文章などにも携わってきた斉藤倫。ここで挙げられた詩の味わいは確かなもので、10章の連なったエピソードは一貫した小説としても見事にまとめられています。
こどもと大人。何かを教えるという構図ではなく、一緒に考えようとする姿勢が良い。読み進めるうち、一緒になってちゃぶ台を囲んで座っているような情景が目に浮かびます。児童書出版社の福音館書店から刊行された、まずはこどもに向けられた本ではありますが、ぜひ大人にも読んでいただきたい一冊です。詩の入門としてはもちろんのこと、意味がないもの、理解できないものにも心を開く世界との向き合い方をこの本は伝えています。各章、ワンポイントの挿絵は漫画家、高野文子。装丁は名久井直子。