京都を代表する老舗喫茶店「イノダコーヒ」。1947年創業時から変わらずネルドリップ式で淹れるコーヒーは全国から通い詰める人がいるほどの愛されぶりです。本書は、三条店の初代店長であり全店の焙煎もこなしていた猪田彰郎（イノダアキオ）さんの70年のコーヒー人生より、コーヒーのおいしい淹れ方やそこから得た学びなどのお話をまとめたもの。

円形カウンターのある三条店。毎日、お玉でお湯を注ぎ淹れる姿は、名物風景です。訪れた人々がアキオさんを囲み、おいしさを味わうひとときは、名店が出来上がるまでの長い年月の中でいくつもの縁を繋いできました。ときには、高倉健、吉永小百合など名優との出会いも。コーヒーの淹れ方を教わっているようで、どこか大人の嗜みを教わっているようにも聞こえるアキオさんの言葉は、検索すればいくらも出てくる溢れかえったコーヒーの正解よりも真っ直ぐに響くものです。

はしもと珈琲、市川屋珈琲などアキオさんの想いを受け継ぐ京都のお店紹介や、イノダで愛される「ぽってりと厚みのあるコーヒーカップ」をはじめとした道具や「ラムロック」などの名物メニューのお話も。表紙のイラストレーション（アキオさん）は、原田治によるもの。カバーを外した表紙は、まるで活版印刷のような凹凸のある仕様になっているなど遊び心のある仕上がりに。