少年が理科室で見つけた不思議な鉱物図鑑。その図鑑をめぐる奇妙な物語を冒頭に置き、その先は世にも不思議な鉱物の博覧会さながらの美しさが続きます。水晶、月長石、石榴石など、実際にある鉱物を元に、著者がそれぞれ創作した小さなエピソードを添えて、架空でありながら現実、現実でありながらどこか夢の世界にいざなわれるような、不思議な宝箱をのぞくよう。長野まゆみならではの理科的少年が重要なモチーフですが、全体に漂う清浄な空気は乙女が愛する本としてもふさわしい雰囲気。石が好きな人にはもちろん、この人の物語世界を愛する方にもおすすめするとにかく美しい一冊であり、当店でもロングセラーとなる文庫本です。
著者:長野まゆみ / 出版社:文藝春秋(文春文庫) / 105mm × 150mm / 174P / ソフトカバー