“普通に読める日本語の雑誌”を標榜するリトルプレスの6号。
今号のテーマは、埼玉県在住の一般人・いしあいひでひこさん。過去に本誌や『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』(左右社)への寄稿はあるものの、一般的な知名度は皆無に等しい「誰も知らない有名人」を一冊まるごと取り上げる異例の特集。サブカルチャー、音楽、活字、映画、TVドラマ、スイーツを絶え間なく摂取し、SNSやブログを通じ独りごちるように独特の文体でしたためてきた知る人ぞ知るいしあい氏の足跡と横顔を、モノクロ・グラビア、ロング・インタビュー、自筆年譜、各界へのアンケート、人生の12曲、甥っ子の寄稿、生年の新聞記事、往復書簡、イラスト、
過去ブログの掲載など、あらゆる方向から照らし出す前代未聞のファンブック。身近な無名の才人を中央に立てながら、昭和から平成、そして令和へ移りゆく時代とカルチャー、その中で生きる個人を顧みる、熱と技の感じられるエディトリアルと、すべての記事のあとに収録された、いしあいひでひこ氏本人の書き下ろしテキストは、他者の個人史を辿ること、その声を聴くことの醍醐味と深い感慨を読み手にあたえます。(涌上)